保田小学校6年生の総合的な学習の時間に関わるようになって、もう10年近くになると思います。こちらの学校でも毎年同じ内容の授業ではなく、子どもたちの様子、伸ばしたい力などを事前に先生方と話し合いながらカリキュラムを決めています。
いろいろな立場の人との関わり方から
初回の授業は、ワーカーのワークショップ形式の授業でした。自分の周りにどんな人がいるのか、改めて考えてもらいました。
意外とたくさんいるなと思った子もいれば、普段あんまり関わりのある人がいないなと思った子もいたようです。
この単元では、子どもたちが普段の暮らしの中で出会わない方たちとの交流や学習をとおして、自分に何ができるのか、自分も含めた幸せについて考えてもらいます。
第3回は車いすユーザーさんとの出会い
2回目には認知症講座を受講してもらい、認知症に対する理解を深めてもらいました。3回目となった10月31日は、いつもお世話になっている車いすユーザーの桑原さんと一緒に伺いました。
6年生の子どもたちにとって、車いすに乗る経験はほぼなく、60人近い2クラスでも実際に車いすで生活した期間があったのは数人でした。さらに、自分の周りにそれを使って暮らしている人がいる・いたというのも数人。子どもたちの生活の中にはあまり意識されない当事者だと分かりました。
初めのクラスでは、車いすに乗っている人は人に助けられることの方が多いだろうという予測が全員、次のクラスでは3分の2の人が同じ予想をしました。そんな質問の後、じゃぁ、別の地区に暮らしている桑原さんは今日、どうやってここに来たんだろう?と問いかけると・・・。
「電車!」 いや、ここ駅ないやん!(笑)
「バス!」 え?ここバス通ってる?デマンドバスに乗れる?
「車に乗せてきてもらった!」
そんなやり取りを経て、桑原さんが自分で車を運転してやってきたことを伝えると・・・
「え―――――っ!」 はい、ありがとうございます!(笑)
車いすの方が運転する車を見せてもらおう!
子どもたちが興味津々になったところで、車いすでの移動を学びながら外に出て、車の仕組みを見せてもらいました。
「一人で乗れるんや!でも時間かかるな。」
「ガソリン入れる時はどうするんやろ?」
「車についてるあのマーク見たことないけど何?」
子どもたちからどんどん感想や質問が飛び出してきました。ガソリンの給油はセルフスタンドが増えたことで、同乗者がいない時は桑原さんの現実的な課題でもあるそうです。
この後、乗り降りを見て、自分たちと違うことがあったかを問うと、ちゃんと気づいている子たちがいました。
スーパーやコンビニなどで目にするあの障害者用駐車スペースがなぜあんなに広くとられているのか、今日、子どもたちは心から納得しました。車いすでの乗り降りでは、ドアを全開にしないといけないのです。
チャレンジする心は障害があるなしに関係ない
最後に、ワーカーから桑原さんが陸上というスポーツをやっていること、視覚障がい者のための広報の読み上げボランティアをされていることをご紹介しました。そのたびに子どもたちからは声があがるんです(こんなに素直な子どもたち、思わずこちらもニコニコになります)。
そんな桑原さんの暮らしは、もちろん、助けてもらわないとできないこともあります。今回でいうと段差のあるところでの介助がそうでした。でも、それ以上に自分にできることを見つけ、楽しまれていることを感じ取ってくれたはずです。障害があるからあきらめるのではなく、「ふ」だんの「く」らしが「し」あわせになるように、ご自身でチャレンジされていることが尊敬するところだとお伝えしました。
ステキな振り返り文を最後にご紹介します。
「はじめは、車いすでできる事は少ないと思っていたけど、車に乗ったり、陸上などのスポーツをできると知り、びっくりしました。これからは私も色々なことに挑戦したいなと思いました。」
(投稿者:M.T)