連続講座として開催している「まちかど相談所チャレンジ講座」。10月15日に開催した内容を一部ご報告します。

ゲストスピーカーにお迎えしたのは、先天性の障害により車いすで生活をされている桑原さんです。医療的ケアが必要だったことから、3歳から18歳まで施設で生活をされていました。その後、ご実家での暮らしが始まり、少し前まで会社勤めをされていました。

見えない障害者

小・中・高校と施設と特別支援学校で過ごし、週に1度程度は外泊としてご実家へ戻られることはあったものの、地域の方と何かをした思い出はないそうです。だから、地元の友達というのがいないんですと話してくれたことに、地域で暮らすことの課題を感じました。

また、道路状況や建物の位置などから、普段はご自身で自動車を運転しています。和歌山市に通勤していたぐらいで、もっと若いころはよく車で大阪まで出かけられたそうです。

でも、車いすで地域を移動するということが退職されるまではほぼなかったらしく、ご近所の方から「車いすで生活されている方がこのお家にいるとは知らなかった」と言われたことがあるそうです。

こんなお話も出ました。「災害時にはなるべく徒歩で避難を。」と言われているけれど、桑原さん自身は、車いすで避難所まで移動することが難しい状況にあります。地域の方の支援が必要になるかも知れませんが、ここで暮らしているということを知られていなかったら、手助けをお願いすることもできないと感じておられます。他にも、近くの避難所は車いすでは自力で入ることができず、なかなか具体的なイメージをもてないとのこと。

でも、その時に参加者の方から、移動が難しいときは周りに助けてくれる人がいればいいんですよねという声があがりました。お手伝いしましょうか?と声をかけられる関係性が大事だと皆さんと確認しました。

買い物ができる場所がたくさん、バリアもたくさん

車いすに乗って気づくバリア

今回は、お話だけでなく、参加者の皆さんと一緒に散歩に出かけました。参加者の方は交代で車いすに乗り、車いすユーザー体験もしました。

会場前の歩道は、排水のためにかなり斜めになっています。その道で車いすを漕いだ参加者は、腕の動きもそうですが、斜めに倒れないように太ももでかなり踏ん張らなければならないことに気づいたそうです。でも、障害のある方は足に力は入りません。

また、道を挟んで目の前にオークワ箕島店がありましたが、皆さんがこの交通量では道を渡ることは無理だと感じました。結局、目の前にあってもわざわざ自動車に乗って移動されるそうです。

お互い様の精神で

桑原さんがおっしゃっていましたが、点字ブロックは視覚障害の方にとっては必要なものですが、車いすユーザーにとってはバリアになります。そんな風に誰かにとって必要なものが他の方にとっては壁になることもあります。でも、いろんな方が暮らす地域なので、お互いの存在を知っていれば、折り合いをつけて譲り合ったり、カバーし合えるものではないかと思います。

自分がここで暮らしているということを伝えたくない方もいるかも知れませんが、みんなが濃いつき合いをする必要はなく、災害など困った時には声をかけあえる関係性を持っておくこと、そのためには挨拶をすることなどが地味でも必要なことなんだと感じました。 また、桑原さんのようにアクティブに楽しんでおられる障害者もいるということをもっと発信することで、偏りがちな障害に対するイメージを払拭していければと思います。障害があっても、人の理解や環境などでチャレンジできることがたくさんある地域にしていきたいものです。