1学期の有和中学校3年生は防災学習に取り組んでいます。今年度、社協はそのひとつの授業枠のオーダーをいただきました。去年ゆうわプロジェクトで実施した「有和防災の日」をやりたい!というのが先生方の意向でした。
年度が変わると学年担当の先生方も入れ替わりますが、同じ学びを経験した先生が違う学年に移ると、こういう共有の仕方ができるメリットがありますね。

社協のつながりフル活用

とはいえ、割と急なご依頼だったので(学校あるあるです笑)、去年と同じメンバーは難しく、ここで「ちょっと無理が言える関係」発動です!この「ちょっと無理が言える関係」は昨年「防災有田みかん会議」にお越しいただいた富士市社協加藤さんからの教えです。
ワーカーが組み立てた授業メニューは

先生は11人、生徒は180人超。とても教員と社協だけではできません(笑)。

今回の授業は、大勢の体験学習ということで、一緒に活動いただける人や団体を想定して組み立てました。ご協力いただいた皆さん、急な依頼、なかなかの丸投げにも関わらず本当にありがとうございました。

それぞれが素敵な講師として活躍してくださいました!アンバサダーたちは実は自分の学年なのでちょっぴり恥ずかしかったはず…立派でしたよ!

それぞれのブースでの学び

一部になりますが、体験ブースのご紹介をします。
何せ6クラス合同なので、各クラスが2ブースずつしか体験できないのが残念なところです。違う学びをして、今後の学習に違う視点が加えられることを願っています。

段ボールベッドの組立と新聞紙スリッパ班。有和中学校には相撲部があるので、体格のいい生徒さんも大丈夫!と有難い立証。通常サイズの新聞紙スリッパは27.5㎝で限界と分かりました(笑)。

和歌山医療スポーツ専門学校とは、今年は何か一緒にやりたいね~と盛り上がっていたところにこのお話!すごくタイミングがよかったです。
そして、今年度から専門学校は「日本語学科」を開設し、現在ネパールから20人の留学生が来ています。せっかくだから日本の文化を知り、交流させたいということで、今回留学生も一緒に学びました!なんだかえらい騒ぎになりました(笑)。でも、それはそれで言葉が通じない中でどう伝えあうかを知るとてもいい学びになりました。

三角巾で包帯の巻き方を教えてもらった後、体操服のジャージでも同じように挑戦していました。覚えられたかな?(笑)

こちらは「椅子づくり」ブース。
去年はこちらから作り方を指示したのですが、今年は「THEノープラン!」準備不足ではなく、敢えて生徒たちの自由な発想でつくり、それぞれができあがったものを比べあって良い所悪い所を比較してもらいました。
なかなか本格的な椅子もできていましたよ。

避難所生活は長くなることも想定して、段ボールを使って椅子づくりをしてもらいました。

ラストは200人分のおしっこ

少し前にSNSで「1000人分のおしっこの量がどのぐらいになるのか」という実験をみました。これは私も見てみたい!知っておきたい!と企画者のワーカーも思っていたタイミングでのご依頼。やるしかないでしょう!
ちょうど社協の備蓄用トイレ処理袋の使用期限が近づいていることもあり、それをローリングさせるために活用していただきました。

先生にお願いして、社協が保管しているトイレセットで用を足すお芝居をしてもらってから、処理の仕方を実演いただきました。

生徒一人ひとりが用を足す経験はできませんので、今回はペットボトルに入れた水道水を250ml程度トイレセットに流し込んでおしっこに見立てました。当日は180人前後の生徒たちがいたはずです。それらを2個のペールに入れていきました。
力自慢の生徒の中には、ギュギュっと押し込んだり、足で踏みつけて圧縮したりして何とか人数分をおさめることが出来ました。
でも、実際はこれがおしっこやうんちだったりするわけです。
押し込める?と聞けば、もちろん「無理」。
重さも結構なものになりました(計測できず残念でした)。

被災地のリアル

今回参加いただいたボランティアの中に、消防士として1月に能登に派遣された方がおられました。この様子を見ていて、その当時のお話をワーカーにしてくれたので、これは私だけが聞くのはもったいない!ということで急きょ無茶ぶりで生徒たちにお話しいただきました。

本当に突然お願いしましたが、生徒たちの集中力はこの時が一番でした。そこにリアルがあったからです。

被災地では、先生がデモンストレーションしたテント式トイレと同じものを使用したというお話からでした。雪の積もる中でそのテント内でトイレをするのは寒くて、冷たくて、過酷なことだったと思います。

被災地で何がしんどいか。
一見、食べ物が手に入るか、お腹は満たされるか、そんなことを私たちは想像しがちですが、彼は何より「出すこと(排泄)」だったと話してくれました。
実際被災地では、断水という制限の中で排泄することがはばかられ、便秘になったり、飲み物を控えて脱水になるということも聞きました。

また、派遣先に入るまでになるべくトイレをしておこうと、道中の公衆トイレに入った時、そこには便器をはみ出して山盛りになった便があったと言います。
今、このキレイな体育館できれいな水で実験をしたことが、実際はものすごい尿臭や便の匂いがあり、時には血液も混ざることでしょう。そんな中でも人間は排泄をしないと生きていけない。短時間でもそれが強く伝わるお話だったと思います。

ちょうど中学生は、前日に有田市が開催した防災講演会にも参加しました。
東京大学大学院の片田敏孝 特任教授による講演でした。この時は、「もはや専門家でも災害がどんな事態になるかわからない。だから、自分たちで判断して行動できることが最も大事だ」と教えられました。

3年生たちはこの後「防災グッズの考案」という作業に入ります。一連の学びが今回の授業だけでなく、生きている間に必ず南海トラフ地震に直面するであろう中学生にとって考える機会になったようです。

生徒たちはどう思ったか

感想が届きましたので、ほんの一部ご紹介します。

「災害が起きたときに経験すること、必要なこと、知識を知れてよかった。実際に非常食を食べたり、簡易トイレの使い方や、椅子のつくり方、そして防災ポーチのつくり方などたくさんのことを学べてよかったと思う。最近地震が多いから家に帰ったら家族と避難場所について話したり、防災グッズの確認をもう一度したいと思う。」

「いつ災害がおきても分からないからこそ、いろいろな体験ができてよかった。避難所の生活など心配なことはたくさんあるけど、今日いろんな体験をしてすこし心配が減った。災害が来ても対応できるようにしたい。」

「災害の時に何が必要かと言われたら、水や食べ物が一番大切だと思っていたけど、トイレや歯磨きの大切さも学びました。トイレを行けずにずっと我慢すると思うと絶対無理だし、歯磨きもしないと虫歯になったり、病気になったりするから、なくてはならないものだと思いました。避難所生活で外国人の人もいると考えたら、日本語が通じないし、難しいなと思いました。こういう実際に体験したり、外国人とかかわる機会はほとんどないからいい経験になりました。」

(投稿者:M.T)